湊七雄展│Forest Again

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作品

2009/11/28(土)〜12/20(日)
開催時間:12:00 - 19:00
休廊日:月曜日・火曜日

>>展覧会リーフレット(PDFファイル)


 E&Cギャラリーの第6回企画として、「湊 七雄 展 Shichio Minato Exhibition | Forest Again」を開催致します。自然の気配を、PVCエッチングという版画技法で表現している湊氏。本展では版画・ドローイング作品を紹介します。


<関連イベント>

オープニングレセプション│2009年11月28日(土)17:00-19:00│参加自由

ギャラリートーク+交流会│2009年12月6日(日)15:00-16:30
参加料:一般500円、会員無料 ドリンク付き



気配の手触りを刻む  

湊七雄作品(部分)  湊七雄の作品は、私たちの意識の内にある、さまざまな風景との出会いの記憶をよみがえらせる。
2008年に発表されたシリーズ「昨日の幻覚」と向かい合った時、私は海辺の光景を思い浮かべた。ここでは、深い青を主にした色彩と、風景の輪郭をなぞるように画面を横切る線で描写がなされている。作品自体は実際に海をモチーフにしたわけではないかもしれない。けれども、その画面はたしかに海を想起させたのである。思うに、内陸の地で育った私にとって、海はある意味で憧憬の対象であり、そうした感情をもって今までさまざまな海の風景と相対してきた。その記憶が湊の作品を前にして呼び起こされたのではなかろうか。もしそうだとしたら、何がそのようなイメージを誘うのか。
 この10年、湊は「森」「風」「気流」「霧」など、自然やその事象をモチーフにした作品によって、人が自然の中に身を置いたときに感じるであろう、濃密で静かな気配を表現し続けてきた。彼が森や自然に対してどのような原体験を持ち、それがいかなるかたちで制作に反映されているかは、作品の題名からでも容易には伺い知ることはできない。しかし、彼が森に独りたたずんで感知したであろう気配は、色彩とかたちをもって画面の中に定着し、ゆるやかな大気の動きを表すような繊細な質感となって、風景にまつわる彼の思いを伝えてくれる。
 湊の作品を特徴付ける独特の質感は、気配の触感と言い表すこともできるだろう。それは近年、MO紙と呼ばれる越前和紙に、PVCエッチングという、塩化ビニール板を版として重ね刷りをする版画の技法によってもたらされている。硬度の低い塩化ビニール板をニードルなどによって彫り進める作業では、繊細なコントロールの下に線の描写がなされるが、それは、彼がかつて体験してきた風景の記憶を一つ一つ思い返す行為のようにも思われる。また、ゴム・ローラーの多用による刷りの工程でも、その反復はイメージを深化させるだけではなく、記憶の手触りを画面の中で確認する所作であるように思われてならない。
 彼はこれらの行程について、肉眼では確認できない自然の中の抽象的な出来事をモチーフにしているため、刻む、彫る、削るといったプロセスを経て、そうした実体のないかたちを自分の中で充分に咀嚼することが必要となると語っている。
 こうして作品に表された、実体が希薄でありながらも確かな手触りを感じさせるイメージは、湊がかつて感応し意識の内に堆積する、自然の「影」のような存在なのかもしれない。そして、自然の光景や気配が、制作の行程の中でその身体に吸収されて「影」となった姿は、湊の記憶を介して普遍化した自然の根源にほかならない。
 この普遍化した自然に接することで、私にとっての海がそうであるように、人は自身の内にある風景への思いを呼び起こされる。さらに、それぞれの原風景は作品が表すイメージと重なり合って一つになり、濃密な静寂さに包まれた、豊かなる気配が展示空間を満たし始めるのである。

篠原誠司(足利市立美術館学芸員)

作家略歴

1972年三重県生まれ。福井市在住。

1997年スウェーデン王立VALAND芸術大学短期留学。1998年金沢美術工芸大学油絵科卒業後渡欧。同年ベルギーゲント王立美術アカデミー修士課程版画科に留学。エンク・デクラマー氏に師事し、主に版画技法と芸術理論の研鑽を積む。2000年版画のマスターディプロマ(芸術修士号)を取得し、同アカデミーを最優秀賞で修了。
その後、ベルギー・ゲント市の現代美術専門画廊Galerij Guido De Keulenaerの契約アーティストとなり、本格的な作家活動を開始。
2003-05年フランスに在住。サンテチエンヌ美術大学の版画科助手として、後進の指導にあたる。2005年度サンテチエンヌ市、アーティストインレジデンスプログラム招待作家。2006年より福井大学教育地域科学部准教授として、絵画、素描、版画を担当。国内外での個展・グループ展多数。

 


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